創作

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異国の地にて(創作1)

 その日は朝から雨が降っていた。長年連れ添った旦那と死別し、異国の地から帰ろうとしていた。世界的パンデミックの状況下で故郷の中国に帰るには色々と検査を受けた上で健康であることを証明しないと帰れないらしい。

 飛行機は成田空港から出るが、住んでいたところからはそこそこ距離があるのでかなり時間に余裕をとって重いキャリーケースを転がしながら家を出た。家のある滋賀の近江からは、まず大阪へ出てそこから寝台特急で夜間に東京まで向かい、その後東京から成田まで向かう予定だった。しかし、物事はうまくいかないもので近江から大阪へ向かう電車が人身事故で長い間遅延していた。大阪の深夜0:33分発の寝台特急。間に合わない予定だった。大阪駅に着いてみると、山陰地方の大雨での影響でこちらも遅延しているらしい。助かったと思ったのも束の間、寝台特急の自分の座席がどこに来るかわからない。

 その時、大学生くらいの男の子たちが通りかかったので声をかけてみた。

「今から来る寝台特急に乗りたいのですが、どこから乗ればいいか教えてくれませんか?」

 大学生らは親切に教えてくれ、さらにその中の1人が私の乗り場まで着いてきてくれた。

 彼は聞くに友達2人と東京から来たらしい。京都旅行に来たけど寝台列車に乗るべく大阪駅まで来たと言っていた。ここ数日の天気は最悪で、思うように観光できなかったのではないかと思う。

 彼はとてもいろいろ話をしてくれて、今までにも京都で外国人に電車の行き先を尋ねられたことがあるそう。合っていると思って教えた行き先が間違ってたらしく、その外国人と一緒に引き返してきたことがあるらしい。

 そんなこんな話をしながら自分の乗り場と思われるところまでなんとか到着した。

「ずっと慣れない地で駅まで来るのが孤独で辛かったけど最後にいい思いができたわ、ありがとう」

 そう伝えると彼は、引き続き良い旅をと帰っていった。

 まもなく到着した寝台列車の乗り口は間違っていた。